結論から言うと
アカペラとは、曲のボーカルだけを取り出したものです。インスト(伴奏)は、それ以外のすべてです。いちばん良い入手元は、アーティストやレーベルがリリースした公式のものです。それがなければ、ステム分離で完成した曲をパートに分けます。声と楽器を聞き分けるよう学習したソフトウェアが、ボーカルを抜き出し、残りをそのまま残します。
結果を左右するのは2つです。その曲について自分が持っている権利と、出発点となる録音の品質です。このガイドではその両方を扱い、続いて、DJやリミキサーがアカペラをセットに組み込む方法を説明します。
まず、使う権利から
完成した曲には、ふつう2つの別々の著作権があります。一つは録音に関するもの。もう一つは、その土台にある音楽と歌詞に関するものです。米国著作権局(US Copyright Office)はこれをCircular 56で説明しており、Circular 14では、著作物の翻案を行うこと、または他人に行わせることができるのは著作権者だけだとしています。リミックス、エディット、マッシュアップは、いずれも翻案にあたります。
曲を分離しても、誰のものかは変わりません。私たちの利用ポリシーは、それを一行で述べています。「他人の作品から分離したステムも、依然として他人の作品です」。また、結果をリリースする権利だけでなく、曲を処理する権利も求めています。ですから、そうした権利を持っている音源だけをアップロードしてください。
使える素材はどこにあるか
- 自分の録音と、許可をくれたアーティストの録音。
- 公式のアカペラとインスト。まさにこの用途のために、それらを収録しているリリースもあります。
- リミックスコンテスト。レーベルが公式のステムをアップロードし、ルールを定めます。たとえば、BeatportのLabelRadarです。
- ライセンスを受けたDJエディット。レーベルの許可を得て、BeatsourceなどのDJ向けストアで販売されています。
作ったものを共有するには、また別のルールがあります。SoundCloudは、リミックスをアップロードする前に、オリジナルの制作者と権利者の許可を得るよう求めており、プロモーション用のDJミックスはフェアユースの対象にならないとしています。Mixcloudは、著作権で保護された素材を含む15分未満のアップロードを受け付けていません。これは一般的な情報であり、法的助言ではありません。
アカペラを手に入れる3つの方法
1. 公式のものを使う
元のセッションから書き出されたアカペラは、手に入る中で最もクリーンなものです。楽器の痕跡はなく、権利もリリースに含まれています。まず、これを探してください。
2. ステム分離を使う
分離は、完成したミックスに対して行います。声や、楽器の種類ごとの音を聞き分け、パートを一つずつ組み立て直します。今ではほとんど誰もが使っている方法で、このガイドの残りもこの方法を扱います。仕組みはステム分離で実際にできることで説明しています。
3. 位相キャンセル:昔ながらの方法
同じミックスのインストがそのままあれば、その極性を反転させて、曲全体と一緒に再生できます。2つに共通する部分が打ち消し合い、ボーカルが残ります。ただし、2つのファイルがサンプル単位で一致している場合にしか使えません。インストを必要としない方法(ステレオミックスの中央にあるものを打ち消す方法)は、キックやベースなど、中央に定位しているものもすべて消してしまい、しかもステレオファイルが必要です。どちらも、今では分離に取って代わられています。
ステム分離で作る手順
- 手元にある最も良いコピーから始める。元のソースから得たロスレスのファイル(WAV、AIFF、FLAC)は、ダウンロードしたMP3に勝ります。非可逆圧縮のファイルはすでに細部を捨てていて、分離ではそれを取り戻せないからです。
- 必要なパートの数を選ぶ。2パート(ボーカルと、それ以外のすべて)なら、アカペラとインストが得られます。パートを増やすと、残りがドラム、ベース、ほかの楽器に分かれます。ビートだけを残したいときに便利です。
- ダウンロードする前に聴く。ヘッドホンで、アカペラだけを再生し、次にインストを再生します。静かなAメロだけでなく、大きなサビも確認してください。
- 元のサンプルレートのまま、WAVで書き出す。ここでMP3に変換すると、分離に加えて、もう一度劣化が重なります。
無料で試聴できる私たちのボーカル除去は、2パートの分離を行います。ダウンロードにお金を払うかどうかを決める前に、自分の曲のアカペラとインストを聴けます。Studioのステム分離なら、ピアノとギターを含む最大6つのパートが返ってきて、結果はライブラリに保存されます。
アカペラがクリーンでないとき
分離したボーカルには、ほかのパートの音が少し残ることがあります。これを「かぶり」と呼びます。シンバルの余韻、スネアの幽霊のような音、ミックス全体にかかっていたリバーブ、あるいは高域の細く水っぽい音が聞こえるかもしれません。どの分離ツールにも多少はあり、DJソフトのメーカーも、自社のドキュメントでそう述べています。
- 新しいミックスの中に隠す。単独では目立つかぶりも、新しいビートの下では消えてしまうことがよくあります。何かを直す前に、文脈の中で判断してください。
- 隙間にゲートをかける。ゲートは、誰も歌っていないときにボーカルトラックを閉じるので、フレーズの間のかぶりが取り除かれます。
- EQは控えめに。声より下をローカットすれば、キックやベースの残りが取り除けます。声がどの帯域にあるかはボーカルEQのやり方で解説しています。
- もう一方のパートを試す。アカペラは粗くても、インストがクリーンなら、必要なのはインストだけかもしれません。
セットやマッシュアップで使う
アカペラを別の曲に乗せて成立させるには、テンポ、キー、フレーズの3つが揃う必要があります。
- テンポ。2曲のBPMを合わせるか、差を数BPM以内に収めて、ソフトウェアで一方を伸縮させます。大きく伸縮させると、声の聞こえ方が変わります。
- キー。最も安全なのは同じキーです。次に良いのは、平行調(CメジャーとAマイナーは同じ音を共有しています)か、五度圏で1つ隣のキーです。DJソフトはキーを独自の記号で表します(Mixed In KeyのCamelot表記や、Open Key)が、表しているキーは同じです。
- フレーズ。新しい曲のフレーズ(ふつうは8小節の倍数)の1拍目からボーカルを始めると、Aメロがあるべき場所に収まります。
無料の曲のキー・BPM判定は、ファイルをアップロードせずにブラウザ内で両方を読み取り、どのキーが隣り合っているかを表示します。
DJソフトの中のステム
今では、ほとんどのDJソフトが、自分で曲をステムに分けられます。デッキ上でリアルタイムに分けるものもあれば、再生前にステムを準備しておく必要があるものもあります。
- djay Pro(Algoriddim):リアルタイム、デバイス上で処理。2020年6月から。
- VirtualDJ:2020年6月からリアルタイムに対応。処理の遅いコンピューター向けに、ステムを事前に準備するオプションもあります。
- Serato DJ:リアルタイムまたは事前準備。2022年12月のバージョン3.0から。
- rekordbox:リアルタイム。2023年3月のバージョン6.7.0から。2025年12月の7.2.8からは4ステム。Apple MusicやSpotifyの曲では、ステム機能は使えません。
- Traktor Pro 4:2024年から。まずステムファイルを作成し、マニュアルによれば、それには曲の再生時間の3分の1から3分の2がかかります。
- Engine DJ:2024年11月のバージョン4.2から。ステムは、ハードウェアで再生する前にEngine DJ Desktopで準備します。
リアルタイムのステムは、パフォーマンスのためのものです。つなぎでボーカルを抜いたり、ある曲のドラムを別の曲の下で鳴らし続けたり。編集したり、処理したり、また使ったりするアカペラなら、一度分離してしっかり確認し、そのファイルを保存しておいてください。
正しくない4つの思い込み
- 「分離したボーカルは、自分が自由に使える」 録音も曲も、依然として権利者のものです。
- 「オーディオのリミックスをリリースするには、シンクロライセンスが必要だ」 シンクロライセンスは、音楽を映像(映画、動画、ゲーム)に合わせるためのものです。オーディオのリミックスに必要なのは、録音と曲の権利者の許可です。
- 「位相反転はどんな曲にも使える」 ミックスと完全に一致するインストが必要です。そうでなければ、ボーカルと一緒にベースやドラムも消えてしまいます。
- 「良いツールなら完璧なアカペラが得られる」 どんな曲からもかぶりをすべて取り除けるツールはありません。頼る前に聴いてください。
よく聞かれる質問
分離したアカペラで作ったリミックスを販売できますか?
録音と曲の権利者の許可がある場合に限ります。レーベルは、リミックスコンテスト、公式リミックスの依頼、ライセンスを受けたDJエディットを通じて許可を与えています。
どのファイル形式から始めるべきですか?
手元にある最も品質の高いコピーです。理想はロスレス(WAV、AIFF、FLAC)です。結果もWAVで保存してください。
アカペラにまだドラムが聞こえるのはなぜですか?
それはかぶりです。まず新しい曲の下で試してみてください。それでも目立つなら、隙間にゲートをかけ、低域をカットします。詳しくは上のかぶりの節にあります。
ドラムやベースだけを取り出せますか?
はい。3つ以上のパートに分ければ、ボーカルに加えて、ドラム、ベース、ほかの楽器も分離できます。
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